プロジェクト / 事業プロデュース

ORANGE SUITE

日光金谷ホテル

#ブランディング #地域 #旅 #空間プロデュース

稼働率の低かった1室を
リノベーションし、
ホテル全体を元気にする

景色があまりよくないことから稼働率が低い部屋を、
泊まるだけで元気になれるような空間
「ORANGE SUITE」にリノベーション。
たった1室を改装することにより、
ホテル全体の注目につなげるとともに、
ホテル、宿泊客、ホテル予約サイト、
ライフスタイル雑誌、家具・家電メーカー、
そしてオレンジにとって
Win-Winとなるプロジェクトをしかけました。

プロローグ

「ホテル・イン・ホテル」
という発想の改装プロジェクト

「この部屋をオレンジ・スイートにするって企画はどうだろう?」

小山薫堂が金谷ホテルの顧問の会議でホテルを訪れていたとき、写真が添付された一通のメールがオフィスのスタッフのもとに届きました。

明治6年(1873年)創業、日本最古のリゾートホテルとして名高い日光金谷ホテル。2008年、この由緒あるホテルの一室を全面リフォームし、ひと部屋だけの夢のホテルをつくってしまおうという「ホテル・イン・ホテル」プロジェクトが小山薫堂のひらめきによって持ち上がりました。

ホテルに新風を吹き込む
一室だけのホテル

ホテル・イン・ホテル計画の舞台となったのは、日光金谷ホテルの第2新館の1階にあるスイートルーム(62㎡)。景色があまりよくないことから稼働率が今ひとつだったこの部屋を、泊まるだけで元気になれるような空間に一変させようということで、部屋名は社名とビタミンカラーにちなんだ「オレンジスイート」に決定。会社創業2周年の日、2008年9月5日にオープンしました。

そもそも小山薫堂が金谷ホテルの顧問を務めることになったのは、一宿泊客としてホテルを訪れ、当時社長だった井上槇子さんと出会ったのが縁。お金で買えない歴史をもつホテルのすばらしさを実感する一方、「せっかくの財産をうまく生かしきれていない部分があったので、さっそくいろいろリクエストした」ことがきっかけ。

一方、社員たちの意識改革が必要だと感じていた井上さんにとって、純粋な客としてホテルの未来を思って意見を述べてくれた小山は、まさに自社に新風を吹き込んでくれる救世主だったそう。

元気になれるビタミンホテル
がコンセプト

「オレンジスイート」の中身をご紹介。

ホテルの廊下から一歩中に入ると、その向こうには和のテイストの別世界が広がっています。ドアの前には靴を脱ぐ三和土があり、奥には一段上がった左右の部屋を行き来するための飛び石。

左手は寝室となる畳の空間。簀の子のようなウッドスプリングのマットレスと、ムアツ布団を進化させた「整圧布団」を組み合わせた、布団感覚の低いベッドを2台設置。壁と天井は和紙張りで、さらに空間全体を蚊帳や天蓋をイメージした布で覆った、繭に包まれたようなスペースです。

そして、右手奥は当時最新のAV機器を備えた家庭のリビングのようなくつろげる空間。女性同士の旅行客も意識したこともあり、一角にはふたりで並んで使える造り付けのドレッサーも設けました。

そして、入り口からリビングに向かう通路の右手にあるのが、改装前よりもひとまわり拡張したバスルーム。リビングに面した壁はガラス張りで、お湯につかりながらリビングの大画面テレビが観られるという趣向。別に、オーバーヘッドシャワーが楽しめる独立したシャワーブースがあり、洗面コーナーもふたり客を想定したダブルベイスン。タオル、シャンプー、石鹸といったアメニティグッズの選定もこだわりました。

部屋づくりの過程を
「メディア」にする

部屋づくりの座組みこそが、このプロジェクトの企画でした。

まず、ホテル側にとってここを改装する費用の捻出は難しかったため、オレンジとホテル予約サイトの「一休.com」による共同事業として改装費を用意しました。
そして、話題づくりのために雑誌への露出を打診しました。雑誌社は小山薫堂が老舗ホテルを改装するというそのコンテンツに興味を持ってくれ、雑誌〈monthly m〉(当時)で「理想のホテルをつくる」という連載を行いました。
部屋に設置する家具や電化製品は企業とタイアップして商品を協賛していただくことに。「ベッドはあれにしよう」「テレビはあれがいい」といろいろ選んでいく過程を記事化。企業からすると、自社の商品が選ばれ、掲載されることで宣伝になります。
完成後、「オレンジスイート」として実際に稼働をはじめ、お客様は実際に商品を使用してくれます。

部屋の予約は「一休.com」のみで受け付け、開業日の予約はサプライズ付きのオークション販売を行いました。
金谷ホテルとしては、費用をかけずに部屋をリニューアルでき、タイアップで備品も揃い、なおかつ雑誌などメディアのPR効果によって集客率がアップしました。
この部屋に宿泊するお客さまにとっても、話題性のあるユニークな部屋に泊まることができる。

部屋を「メディア」として捉えることで、まさにみんなが幸せになるWin-Win-Winな企画となったのです。

後日、著名なギタリストの鳥山雄二さんがこの部屋でギターを奏で、その模様がそのまま鳥山さんのプロモーションビデオになりました。そして、このビデオはブルーレイディスクとして部屋に設置してあります。

Executive Producer:小山薫堂、軽部政治
Producer:秋下麻衣、内田真哉、森川修
Space Design:阿久津雄一郎(株式会社アクツデザイン)

オレンジスイート予約サイト
日光金谷ホテル

実施時期:2008年9月 OPEN

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