プロジェクト / 企画プロジェクト

日本博 Kōgei Dining ニッポンのわざをあじわう

文化庁

#イベント #カルチャー #ソーシャルデザイン #日本文化 #食

食を通して
日本の工藝をあじわう
日本文化の宴

人間国宝の手による器で、
星付きの料理人が作る料理をいただけたら・・・
考えたのは、本物に触れ、本物を使うこと。
日本文化を発信する日本博にて工藝と食の宴
「Kōgei Dining ニッポンのわざをあじわう」
を企画、東京と京都を舞台に開宴しました。

プロローグ

「日本博」
縄文から現代まで続く
日本の美

2020年の東京五輪・パラリンピックに合わせ、「日本人と自然」をテーマに、縄文から現代に至る「日本の美」を国内外へ発信し、次世代に伝えることで未来をつくろうというプロジェクト。日本の文化の豊かさを世界に発信することに精力的に活動した故・津川雅彦氏が発案し、政府官邸に設置された「日本博総合推進会議」のもとで推進されたことでも知られています。

2019年に開幕する以前から、「日本博をいかにもりあげるか?」「日本の伝統工芸の魅力をどう発信するか?」というご相談をいただきました。

考えたのは、「本物に触れ、本物を使う」こと。
人間国宝の手による器で、星付きの料理人が作る料理をいただけたら・・・
伝統工芸の食器を使って、料理を食べる体験の場をつくり、その参加チケット代には食事代と工芸の作品代が含まれており、実際に使った器を持ち帰ることができる。
そんな工芸と食の宴を企画し、東京と京都の厳かな空間を舞台に実施しました。

日本の美と技を味わい尽くす
日本文化の粋が結集

2019年11月6日、東京・明治神宮「桃林荘」で開催しました。

「伝統的な技の継承とともに、革新的な創作につなげること、また、多くの人に工芸作品と触れあう機会を提供して、使い手と作家の豊かな出会いが紡がれていくことを願っています」
これが、イベントをプロデュースした小山薫堂のねらいです。

共にイベントをプロデュースしたのは、漆芸家の室瀬和美さん。2008年、重要無形文化財「蒔絵」保持者(人間国宝)に認定。今回は、登山家の三浦雄一郎さんがエベレスト登頂の際に持参した「漆椀わん ちょもらんま」を選びました。

料理は、2012年から9年連続で「ミシュランガイド東京」で三つ星を獲得している「日本料理 龍吟」の山本征治さんが担当。人間国宝の伝統工芸への思い入れでは山本さんが日本一では?と小山もうなるほどで、参加を打診しました。

会場となった桃林荘は、東京都選定歴史的建造物に選定されており、静謐な明治神宮の一角にあって、温かみも感じる雰囲気。
料理の提供に先立ち、国立能楽堂プロデュースによる能楽囃子ばやしも披露され、いよいよ日本文化の粋を集めたひとときの始まり。

昆布やかつお節、干しシイタケ、干し貝柱、干しエビの「五つの乾貨」をうま味出汁のベースに、ニシンやフカヒレを炊きあげた一皿目から、毛ガニ、スッポン、サンマ、アワビ・・・贅沢な料理が次々と供されます。
日本の食材の豊かさ、ひいては自然の豊かさを表現したいという思いが込められていました。
そして「メインディッシュ」のちょもらんま椀。白いご飯と牛肉とマツタケの炊き合わせが盛られていました。

室瀬さんは「漆椀に白いご飯を少しよそう。こうしてほしいなという、そのままの形でうれしくなりました。陰影の美しさがある」と笑顔で感想。
さらに、「漆器は取り扱いが大変なのでは、と敬遠されがちですが、後片付けも簡単です。ご飯粒が付いていたら水を張ってしばらく置いておく。ほかの食器を食洗機に入れるなどしていれば、椀に付いたご飯粒が柔らかくなります。洗剤を付けたスポンジで洗って、水切りかごに置いて自然乾燥で構いません。きれいなものは弱いと思うでしょう? 漆は美しくて強い器なんです」

第二夜は京都ならではの
華やかなセッション

2019年11月21日(木)、京都・下鴨神社「供御所」でも開かれました。

器は、鳥取県の陶芸家で重要無形文化財「白磁」保持者の前田昭博さんが「白瓷捻面取盃」を用意。

東京とは趣向が異なり、小山が京都で仕掛けたのは、京都を舞台に伝統工芸と日本料理とイタリア料理がセッションすること。

日本料理は、京都を代表する「板前割烹 浜作」3代目主人で「現代の名工」に認定された森川裕之さん。森川さんは贔屓筋を四季折々の美味で魅了する一方、2300回料理教室を開講し、日本料理の魅力を発信しています。

一方、イタリア料は京都・岡崎の「cenci」オーナーシェフ、坂本健さん。坂本さんが手掛けるのはシンプルながらも素材のポテンシャルを引き出したイタリア料理。若きオーナーシェフながら、店舗にとどまらない活動から農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」を授賞しています。

まだ紅葉の残る夜の静かな下鴨神社で、宴のはじまりとして、京舞井上流五世家元で重要無形文化財「京舞」保持者の井上八千代さんによる舞が披露されました。
下鴨茶寮のスタッフが運営をトータルでバックアップしました。

食後の座談会で、前田さんは「白に合わせた料理、大根の面取りが出てきて非常におどろきました」と感想。

白いごはんに白い大根を入れるという森川さんのアイデアに対し、「前田さんの白磁に合うように大根をカットしてくれ、という薫堂さんのリクエストでたいへんでした。白ほど難しいものはないのですが、盛ってみて気づくことがたくさんありました」と裏話を披露しました。この日は、魯山人、河井寛次郎など森川さんのコレクションの器も登場し、工芸の宴に華を添えました。

最後に小山薫堂より、「僕は今日、日本酒もワインもすべての飲みものを白瓷捻面取盃でいただきました。やはり器は食べもの飲みものと一緒になったときに価値が生まれる、それをあらためてみなさんと実感できたと思います。これからも日本の工芸を楽しみましょう」とコメントし、宴はお開きとなりました。

本物に触れる、使うこと
Kōgei Dining

日本文化を代表する工芸は、この国の風土で育まれた土、石、布、漆、木、竹などの自然素材を使って、作家の手わざで仕上げられている美の世界です。この「本物に触れる、使う」ことの大切さ。使うことがなければ、技は継承されない。その意味では、使い手、食べ手も文化の担い手と言えるのかもしれません。

日本博のひとつとして企画した「Kōgei Dining ニッポンのわざをあじわう」は、2020年以降、オレンジの企画をそのまま継承され、場所や人を変えてイベントは続くこととなりました。

Client:文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会
Executive Producer: 小山薫堂
Project Manager+Creative Director:内田真哉

日本博 Japan Cultural Expo
日本博 Kōgei Dining

実施時期:2019年11月6・21日

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